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マニュアルホテル.png

舞台はホテルの一室。泊まっている新一とテツがホテルの不思議なシステムに疑問をもちながら、進行していく。

 

   明転

 

   下手から新一とテツが話しながら登場

 

新一「さっきの受付の人、変じゃなかったか?」

テツ「すっごいキレイだったなー」

新一「お前は顔しかみてないのかよ。どうも機械みたいで気味悪かった」

テツ「キカイ?」

新一「俺らがこう言ってきたら、こう返す。みたいなマニュアルでもあるんじゃない

   かって思うくらい、まるでその通りに返されてるようで気持ち悪かったよ」

テツ「そうか?俺は全然気にならなかったけど」

新一「お前は鈍感過ぎるんだよ」

 

   新一、軽く腕などを回して疲れた様子をだし、舞台客席側を向いて、カーテン

   をあけるマイム。

 

新一「(驚いて困惑した顔)オーシャンビューじゃない」

 

   新一、下手にいって、蛇口をまわすマイム。

 

新一「あれ?水でねーよ、なんなんだよー」

テツ「え?まじで?」

新一「オーシャンビューだっていってたのに窓の外が壁だし、水もでないんじゃ話に

   ならない!とりあえずなんか飲んでからフロント行こうぜ」

テツ「何があるかな」

 

  テツが上手にあるいていって、冷蔵庫をあける

 

テツ「あれ?これ冷蔵庫じゃねーよ?」

新一「え?じゃあ何?」

テツ「ただの箱みたい。なんか入ってる」

 

   中から本を取り出し、眺める。テツが新一のところまで持っていく。

   新一が本を軽く読む

 

新一「マニュアル?」

テツ「このホテルの?」

新一「このホテルは以下のマニュアルに従って行動することが宿泊条件です。マニュ

   アルに反した行動があった場合、警報がなる場合がございますのでご注意くだ

   さい。」

テツ「これがマニュアル?」

新一「水を出したいときのマニュアル」

 

   テツが蛇口の前までいく

 

新一「右へ三回、左へ二回、右へ四回」

 

   水のSE

 

テツ「おお!」

新一「おお!・・・いちいち面倒だな」

テツ「なんか謎解きみたいで面白いなー」

新一「冗談じゃねえよ、なんで家のポスト開ける以外でダイヤルロック回さないとい

   けないんだよ」

テツ「いいじゃんいいじゃん、で、次は?」

新一「冷蔵庫」

 

   テツが本を覗き込んで、新一の指差す部分を読み、冷蔵庫の前にいく

 

テツ「ごま!」

 

   冷蔵庫をあける

 

テツ「おお!」

新一「アサヒ?」

テツ「キリン」

新一「よしっ」

  「あとはこれだ」

 

   テツに本を見せる。二人で客席を向く

 

新一&テツ「オーシャンビュー!」

 

   カーテンを二人で勢い良くあけるマイム

 

新一&テツ「おおおおお!」

 

   ひとしきりきれいな景色を眺めてにこにこする

 

新一「でも面倒だな」

テツ「ごもっとも」

新一「ためしに本当に警報が鳴るか試してみようぜ」

テツ「じゃあ・・・」

 

   テツが冷蔵庫の前にいく

 

テツ「バルス!」

 

   警報のSE

 

テツ「わーごめんなさい!嘘です!ごまです!俺、ごまです!」(警報が止まる)

 

新一「このホテル怖くないか?いまならまだ他のホテル探したっていいけど」

テツ「マニュアル通りやれば大丈夫なんだろ?俺はここで構わないけど。俺たち無職

   なんだし、安いとこ、他にないだろ」

新一「俺は無職じゃねえよ!」

テツ「毎日ひよこのオスとメス仕分けしてるだけじゃねえか!」

新一「結構難しいんだぞ!」

テツ「早いとこまともに就職しないと俺らもう三十路だぜ」

新一「わかってるよ」

テツ「とりあえず、露天風呂でも入りにいって、今日はリラックスしようよ」

新一「そうだな」

 

   新一とテツ、下手にはける

   ひと呼吸置いて、再び下手から入ってくる

 

新一「いい露天風呂だったなー。景色もよくて」

テツ「すっごいキレイだったなー」

新一「都会にいたらこんな機会めったにないよな」

テツ「キカイ?」

新一「ああ。でもほんのちょっとお湯がぬるかった気がするな」

テツ「そうか?俺は全然気にならなかったけど」

新一「お前は鈍感過ぎるんだよ。・・・・あれ?なんかこんな会話さっきもしなかっ

   たっけ?」

テツ「え?そう?気のせいじゃない?」

 

   新一がだるそうに蛇口の方へ向かい、マニュアル通り回して手を洗う

   テツは冷蔵庫の前で気合いを入れる

 

テツ「・・・ごま!」とじる「ごま!」とじる「ごま!」とじる

 

新一「俺、コンビニいこうかな」

テツ「あ、俺いってくるよ」

新一「あ、じゃあおつまみを適当に」

テツ「おっけー」

 

   下手にテツがはける

   新一は本を手に取って読む

 

新一「しかしおかしなホテルだな。・・・どうしてこんなにマニュアルにこだわるん

   だろう。でも他の部屋で警報なってるの全然聞こえないんだよなー。この立地

   にしては安いから意外とリピーターが多いのかな。俺だったらもう泊まりたく

   ないけど。・・・ん?ここも求人が出てる。みなさんはマニュアル化された人

   生に興味はありませんか、当ホテルではマニュアルを啓示することにより皆さ

   んがマニュアル人間であるかどうかを計らせていただいております。もしマニ

   ュアル人間だった場合、当ホテルへの内定を許可します。どういうことだ?」

 

   下手からテツが入ってくる

 

新一「お。おかえり」

テツ「すっごいキレイだったなー」

新一「え?何が?」

テツ「キカイ?」

新一「なんの?お前なんか変だよ?」

テツ「そうか?俺は全然気にならなかったけど」

 

   新一が恐怖で固まる

   テツは立ったまま動かない

 

新一「このホテルやっぱりおかしい・・・おい!ホテル出るぞ!」

 

   新一がテツの腕をつかんで部屋から出ようとするがテツは動かない

   警報のSEが鳴る

 

新一「てっちゃん!帰ろうよ!」

 

   テツが動かないので新一は一人で下手に逃げる

 

   一度暗転して、ひと呼吸置いてテツだけにスポット

 

テツ「いらっしゃいませ。本日は当ホテルをご利用いただき誠にありがとうございま

   す。まず初めに、簡単にマニュアルをご説明させていただきます・・・

 

   このまま暗転

 

 

                             END

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