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やめさせないと.png

   舞台はテツの家から始まる。新一にバイト先の後輩について相談して、なんとかその後輩をやめさせようと模索する。

   舞台の上手にテツが座っている

 

   明転

 

テツ「いっちねんせーになったーらー、いっちねんせーになったーらー、ともだちひゃっくにんできるかなー」

 

   歌っている間に新一が下手から登場

 

新一「よう」

テツ「あ!しんちゃん、久しぶり」

新一「ほんとだよー、急に呼び出すから何かと思ったよ」

テツ「たいしたことじゃないんだけどさ、一年生になったらって曲あるじゃん」

新一「ああ」

テツ「あれって百人で何を切るの」

新一「は?」

テツ「とーもだーちひゃっくにんで、切る、かな?って」

新一「なんだよ、かな?って。切るじゃねえよ、出来る、だよ」

テツ「え?そうなの?!俺いま知ったわーそれ」

新一「何の百人斬りだよ」

テツ「かっこいー!百人で空(くう)を切る!えい!えい!」

   立ち上がり、テツが空を切る

新一「富士山で何が起こったんだよ!」

テツ「でもさ、友達百人で富士山でおにぎり食べるんだろ?」

新一「おう」

テツ「じゃあ、自分入れたら百一人だよね」

新一「・・・」

   あきれた新一とドヤ顔のテツ

新一「どうでもいいよ!!!」

テツ「よくねえよー、国家問題だよー」

新一「政府は動かねえよ」

テツ「ひゃーくいーちにーんでたーべたーいなー!」

新一「ゴロが悪い」

テツ「ぜーんいーんでたーべたーいなー!」

新一「もういいよわかったよ、それでいいよ、ってかそんなことで呼んだのかよ」

テツ「違うよ」

新一「早く本題言えよ、バイト終わりで疲れてるんだから。こっちは」

   目を押さえて、疲れ目の仕草

テツ「毎日毎日ひよこばっかり仕分けして飽きない?」

新一「疲れるけどなー、俺、ひよこ好きみたい」

テツ「そっか」

新一「疲れつつ、癒される、みたいな」

テツ「俺も仕事にそういうの見出したいわー」

新一「あれ?てっちゃん、バイト始めたの?」

テツ「メールで言ったじゃん!カフェのバイト」

新一「え?そんなメールきてた?」

   携帯を取り出してみるマイム

新一「だいたいお前、その日の出来事、毎日メールしてくんなよ、彼女かよ」

テツ「ごめんごめん。しんちゃんしか友達いないんだもん」

新一「ああ、これ?お前のメールは誤字脱字が多すぎてわかんないんだよ、バイトをハイクって書いてあって変な趣味始めたんだなーと思ってたわ」

テツ「ああ、間違えた」

新一「俳句をカタカナで送ってくるのも変だとは思ったけどな」

テツ「俺が俳句始めるわけねえだろ。一度は挫折した俳句の道を」

新一「・・・しらねえよ!お前の経緯は。はやく本題言えよ」

テツ「言ってやろう そこまで言うなら 言ってやろう」

新一「・・・」

テツ「なんか言え 俺の俳句に なんか言え」

新一「ないよ!そんな俳句にコメントなんてねえよ、はやく本題言えよ」

テツ「つめたいなー!わかったよ、実はな、バイトの後輩のことなんだよ」

新一「え?てっちゃんもう後輩いるの?」

テツ「俺の入った次の週に入ってきた」

新一「ほぼ同期じゃん」

テツ「でも学生だぜ!年下のくせにほんとなめてんの!」

新一「たとえば?」

テツ「下駄で出勤すんの!」

新一「え!仕事中は?」

テツ「もち、下駄。だから表出れないの」

新一「すげえな」

テツ「あと、客がいないときはピクルス食いながらずっと反復横跳びしてんの!」

新一「反復横跳び?!下駄で?!」

テツ「そんで遅刻はよくすんのに上がり時間だけは一秒単位で守んの!」

新一「けしからんな!」

テツ「ストローさすとき、袋のままダイレクトインなんだぜ?!」

新一「ダイレクト!?ほんとにいるんだそんな人・・・」

テツ「注意してもさ、口をもぐもぐさせてんの!」

新一「人が怒ってんのにガム食ってるなんて最低だな!」

テツ「ピクルスだよ」

新一「どんだけピクルス好きなんだよ」

テツ「どうにかそいつやめさせたいんだよね。でもそしたら俺が悪者みたいになっちゃうから、しんちゃんに何かいい策を考えてもらおうと思ってさ」

新一「なんだ、そんなことか。それなら俺に任しておけよ」

テツ「ほんとに!しんちゃんはやっぱり頼りになるなー。で、どうするの?」

新一「ピクルス禁止令だよ」

テツ「ピクルス禁止令?」

新一「おそらくそいつはピクルス中毒。いや、ピクルス星人なんだ」

テツ「うん」

新一「だから、ピクルスは持ち込み禁止にするんだよ」

テツ「なるほど」

新一「あと、床を砂利にするんだ」

テツ「え?!砂利?!」

新一「そうすれば、下駄の奴は非常に歩きづらい。まして反復横跳びなんて出来やしないだろうさ」

テツ「すげえよ!しんちゃん!」

   新一のドヤ顔。テツが立ち上がる

テツ「俺、明日、店長に言ってみるよ!」

   新一も立ち上がり、テツの肩に手を置いて

新一「検討を祈る」

 

   一度暗転して、新一は上手に、テツは下手にはける

 

   明転

 

   新一が上手から登場

新一「ここがてっちゃんのカフェか・・・サンマヤクカフェ・・・なんか美味しそうな名前だな・・・」

   新一が自動ドアを通るマイム

   下手からテツが登場

テツ「いらっしゃいませー!あ!しんちゃん!」

新一「きちゃった」

テツ「やだなーもう、急にこないでよ、彼氏じゃないんだから!」

新一「お前が毎日、俺のカフェラテ飲んでほしいってメールしてくっからきてやったんじゃねえかよ」

テツ「ありがとうございます!」

新一「じゃあとりあえずおすすめもらっていい?」

テツ「かしこまりました。こちらのサンマラテでよろしいですか?」

新一「あ!なにこれ!さんまの絵になってるじゃん!」

テツ「ラテアートってやつです」

新一「かーわーいーいー!」

テツ「ありがとうございます!」

新一「ところで、例のピクルス星人は?」

テツ「お前の言った通りやったよ、みてこれ」

   新一がカウンターのなかを覗き込むマイム

新一「うわー、一面砂利だ」

テツ「でな、あいつ、これで反復横跳びやって捻挫してから、シフト急に減らしてさ他に就活でもしてそうなんだよね」

新一「やったじゃん」

テツ「しんちゃんのおかげだよー。今日はお代は頂きません!」

新一「マジで?いやー、てっちゃんの役に立ててよかったよ」

テツ「ほんと助かったー」

   電話の音

テツ「ああ、ちょっと待ってね」

新一「うん」

   店の電話にでるマイム

テツ「はい、サンマヤク横浜店でございます。あ!どうしたんだよ、え?辞める?」

   電話口をふさぎつつ新一へ小声で

テツ「ピクルスだよ、ピクルス」

新一「え!辞めるって?!」

   再び電話に出る

テツ「まあ、お前が自分で決めたことなら仕方ないか」

   笑いをこらえる新一

テツ「え?もう就活してるんだ。どこ?・・・ひよこを仕分ける?」

   顔色が変わり、膝を付いてくずれる新一

   するとテツが涼しい顔で

テツ「あーそっか。でもそこだけは辞めとけ」

   新一をみるテツ

テツ「どうやら明日から、ピクルス禁止らしいから」

   電話を切るテツ

新一「てっちゃん!!」

   両手を広げてドヤ顔のテツ

 

新一「俺もピクルス大好きなんだよー!」

   崩れる新一

   驚きの顔のテツ

 

   暗転

 

 

                           END

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